2012年8月26日日曜日

【感想】おおかみこどもと薄情なわたし


映画「おおかみこどもの雨と雪」を見た。前評判で「とにかく泣ける」とか「いずれ母になる人は見るべき」とあったので、ハンカチを手に覚悟して観に行った。…が、予想に反し、全然泣けなかった。ウルっときたりはしたけど、ほとんど涙の一滴も足れず。あれ?こんなもんかしら?と思って明るくなった場内を見渡して唖然。皆泣いてるじゃないですか…。そうしてわたしは自分自身のことを薄情な奴!と思いこんだわけです。オワリ。 …と、ここだけで終わるのはもったいないので、「なんで泣けなかったのか」を考えてみることにした。

以下、観終わってから数時間後につらつらと書き込んだ自身Twitterより抜粋しながらのまとめ。

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●おおかみと人間のはざまの子供たちの姿とか、家族の絆とか描くのはよかったんだけど、それならお父さんもいっしょであってほしかった(´・_・`)●

そもそも最初から最後までぬぐい切れなかった違和感はそこ。おおかみと人間の狭間で生きる子供たちとそれを支える親の姿を描きたかったなら、どうしておおかみおとこの父親を死なせる必要があったのか。父親をいないものとして扱うことで、母親の存在の偉大さが際立ったといえばそうかもしれない。仕事ばかりで家庭を顧みない現代社会の父親への暗喩なのかもしれない。でも、だからといって死なせることはないだろう…。しかも意味のわからない死に方で・・・。おおかみおとこの葛藤とか、どうやって彼が大人になったのかとか、そういう部分を知りたかった。少なくとも私は。

勿論世の中には色々な理由で両親が健在じゃない家庭もいるから、父親と母親と子供たちという状態で家族のきずなを描かなければならないわけでもないし、そこは別に片親でもいいと思う。父親の死ぬ意味がよくわからなかったのが純粋に嫌だった。ただそれだけのことで、本編を見ながらもずーっとわたしはもやもやしていた。

●あんなできた母親はいないし、そもそも大学はどうしたんだよとか、実家にはなんて伝えてるんだのとか、貯金で暮らすには無理があるだろとか、いろいろ考えてたらモヤモヤしかしないよね(´・_・`) ●

実は細田監督の作品を見るのは初めてで、かの有名な「時をかける少女」も、「サマーウォーズ」もわたしは観ていない。だからこの作品に特化して言うけれど、この監督、母親とか家族に幻想を求めすぎじゃないの…?と思ってしまった。悪い言葉ですみません。

なんでお母さんがあんな菩薩みたいなんだよ…。あれじゃ人間じゃない、神様じゃないか。その時点でもう現実感がなくて、もうどうしようもない。 一番違和感があったのは、母親の花の家族(雨と雪にとってのおじいちゃんとかおばあちゃん)がノータッチなところ。花のお父さんはもういないみたいな台詞があったけど、じゃあお母さんは…?娘が大学やめて、どこの馬の骨ともわからん男と子供作って、ド田舎に引っ越して暮らしているその間中知らんぷりですか!?家族のきずなをテーマにするなら、そのへんも配慮してあげてもいいんじゃないでしょうか。

その一方で、ド田舎のじーちゃんばーちゃん近所のおばちゃんとの関わりは有ったりして、やっぱり、違和感。結局は、監督が描きたい家族だけを描いてる、幻想でしかない。

●完全にファンタジーとして見れれば良かったけど、全体的に現実さを推し出していたもんだから割り切ることもできなくて、あーなにこれ!なにこれ!と、自分の中で整理ができないままに終わってしまったわけです(´・_・`) ●

本編を通してずっと心の中にあったのは、もやもやーっとした違和感。結論としてはそこ。おおかみおとこの存在の意味は?花の家族は?両親は?え、こんなこと現実にあり得るの?・・もうそんな細けぇことはいいんだよ!状態で、ファンタジーとして割り切って楽しめたならまだ良かったのかもしれない。ファンタジーは好きです。ロードオブザリングとかもう大好き。ディズニーも大好き。この映画の性質の悪いところは、無理やりにでも現実と結び付けようとする描写。

おかげで割り切ることもできず、かといって現実として受け止めることもできず、結果的にただただ違和感を感じるばかりで終わってしまった。

おおかみおとことの間に生まれた子供たちとの話。もうそれだけで明らかにファンタジーなんだから、そういう話にしちゃえばいいのに。それを無理無理に現実と結び付けて、やれ児童相談所だ、やれご近所付き合いだ、やれモンスターペアレンツだ…と出てきてしまうもんだから、ああもう!何が言いたいんだよこれは!!と、巨人の星の親父さん並にちゃぶ台返しをしたくなった。割と本気で。

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…そんなこんなで酷評してしまいましたが、映像とか音楽とかキャラクターとかはすごく素敵だったのでそういった部分では好きです。アニメ史上に残る傑作だとは思うので、正直言えばもう1回観たいくらい。ただわたしの価値観※には合わなかったという、それだけの問題なのです。

※わたしの価値観:全体的には、山田詠美の本にいちばん合っていると思います。破天荒な設定を掲げつつも、人間というものに対しては、すごく現実的な描き方をするひと。わたしはそんな世界が大好き。

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